アニエス・ジャウィの映画なので、とても楽しみにしていました。
この人はクラピッシュ監督の「家族の気分」の、ごく普通の人々の普通の生活を普通に見せて実に深い脚本に惚れたのが出会い。
監督第一作の「ムッシュ・カステラの恋」も冴えないちょっと偏屈な中年男がささやかだけれど、とてもポジティブに変化する様子に勇気をもらえる映画でした。
この「LOOK…」も期待通りに、親しみやすく、そして深く元気の出る映画でした。
有名な作家の父、若く美しい義母を持つ、劣等感のかたまりで人を“すがるような目で見る”娘ロリータ。一応女優の卵で声楽も学んでいるものの、容姿もぱっとせず、歌もいまひとつ。自分に親切にする人は全部父が目当てと思いこみ、でも、自分だって強度のファザコン。
父は父で実はスランプでここしばらくは何も書けない状態が続き、新進作家に追い抜かれそうな今日この頃。若い妻には「あなたについていけない」と家出され、娘の気持ちは全く理解も出来ず…
この父がジャン=ピエール・バクリ。アニエスの公私ともに渡るパートナーだそうですが、うまい!
それで作家か~~?!とつっこみを入れたくなるほど、他人の気持ちに対して想像力が欠如していて、いやーな面もたくさんあるオヤジなのに憎めない。
ほかにもロリータの歌の先生でもある新進作家の妻(アニエス・ジャウィ)やその夫、偶然の出会いでロリータと親しくなる新米ジャーナリスト、そのほかの人々がからみあって話が展開していきます。
とはいえ、何か大きな出来事が起きるわけではないのですが。
そんな日常の人と人との関わりの積み重ねの中で内面に変化が起き、それによって、また関わり方が変化していく…。
そこから生まれる悲喜こもごも。
「気づく」ことの大切さを感じる映画です。