好きな監督BEST5に入る、エミール・クストリッツァの久々の長編。
やっぱり、この人の「どっこい生きてるぜ」的な逞しさが好きだ!
国境近くの村に住む鉄道技師のルカ。線路は通っているものの、肝心の列車は通らない線路を行き来するのは、トロッコとルカお手製らしき自動車を改造した自家用列車(?)。
自宅は駅舎で屋根裏には鉄道模型のジオラマが。(本当に鉄道好きなルカ♪)
家族はほこりアレルギーのオペラ歌手である妻と、サッカー選手を夢見る息子ミロシュ。
テレビからはボスニアでの紛争のニュースが流れているが、ルカは「戦争なんて起きない」と、のんきに過ごしている。
ところが、息子ミロシュに徴兵の知らせが来て、出征の祝いをしていた、まさにその夜戦争が勃発。
妻はハンガリー人と駆け落ち、ミロシュは敵方の捕虜にされ…。
そんなとき、ミロシュの友人が「ミロシュとの捕虜交換の相手にしろ」と敵方の看護師サバーハをつれてくる。明るく素直な娘のサバーハに惹かれるルカ。二人で過ごすうちに愛を感じ始めるが、愛する息子を取り戻すには、サバーハを敵方に渡さなければならない…。
ああ、あらすじで長くなってしまった。
クストリッツァの映画に出てくる人々は、どこか妙ちきりんで、たくましい。
逆境にあっても、へこたれないし、しぶとい。
だから、見ていて元気になる。
このような時代における彼の楽観的な姿勢に疑問を投げかけていた新聞の映画評があったけれど
紛争の絶えないバルカンに生まれて、祖国の悲劇をずっと目の当たりにしてきたからこその、クストリッツァの逞しさを「甘い」とすることのほうが、よほど甘いと思う。
ルカはへこたれそうになるが、笑ってしまうようなできごとで救われる。
その先には希望がある。
それを信じなくて、今の世の中で何ができるというのだろう。
クストリッツァの映画といえば、ロマの音楽。
これもまた元気が出る!
クストリッツァの映画といえば、動物たち。
今回もいいぞー。
お飾りペットじゃない猫や犬が生命力にあふれている。
そして、涙を流すロバ。
笑って泣けた154分。