平凡で存在感のうすーい主婦スズメ(上野樹里)。なんとなく、刺激もないまま過ぎていく毎日にちょっと焦りを感じ始めたスズメの目に飛び込んできたのは「スパイ募集」のちっちゃなちっちゃな張り紙だった。
潜伏するスパイは「ふつう」でなければならない。
ということで、一生懸命「ふつう」にしようとするスズメ。そのままでじゅうぶん「ふつう」なのに。
「ふつう」を意識し始めると「ふつう」って何?という難題が持ち上がる。
たとえば、布団干し。
表から干すのがふつうなのか、裏から干すのがふつうなのか。
叩くのは干してすぐがふつうなのか、取り込む前がふつうなのか。
そんなスズメに「ふつう」を指南する先輩スパイたちは、どうも「ふつう」じゃない…
昔、終電もなくなり朝まで時間をつぶす目的で、7、8人で個室居酒屋へ行ったときのこと。
ドアの開け閉めがなんだかスムーズではなく、気になっていたのですが
一人がトイレから戻ってドアを閉めたときにいやな感触が。
「あれ?開かない」
どれどれ…というので、ノブをがちゃがちゃやってみたり、あれこれやっても開かない。
「げー、閉じこめられたよー」
注文用のインターフォンで店員を呼ぶが、時間も時間で従業員も少ないのかなかなかこない。
「でも、もともと鍵があるとかそういうのじゃないからなぁ」
「オートロックで閉め出し食ったっていうのとは違うもんね」
「ここで死ぬの~?」
そのとき、一人が鞄をがさごそやって、取り出したのはドライバー。
「え~、なんでドライバーなんて持ち歩いてんの~?!」
一斉にあがる疑問の声に、ドライバー氏は逆にいぶかしげな表情で
「え、ふつう、もってるでしょ」
と、言ってのけたのでした。
「ふつう」っていうのは、外から見ると「へんてこりん」だったりするものなのですね。
この映画の「ふつう」の「へんてこりん」さは、「へんてこりん」を意識した分
「ふつう」さが弱くなっていて、そこが残念。
「この人たちの『ふつう』って変だよね。そう思うでしょ」っていう作り手の声が聞こえちゃう。
「ふつう」を「ふつう」として描いて「へんてこりん」にできるのは
やはりカウリスマキかな。
あー、新作はまだでしょうか~~~~~